ノコギリヤシは排尿の悩み(前立腺肥大症)に効果なし?
ノコギリヤシ(ソウパルメット、セレノア・レペンス)論文6本で格付け2026-10-04 更新
結論
前立腺肥大症の排尿の症状には、飲んでもほとんど差が出ません。
- 量を通常の3倍に増やしても、はっきりした差は出なかった
- 1年以上飲んでも、差はほとんどなかった
- 排尿の症状は前立腺がんでも起きるため、まず泌尿器科へ
効くと言われていること
論文ではS〜D の決め方は格付けの決め方
飲む前に:公的機関の注意があります飲む前に知っておくこと
排尿の症状は前立腺がんでも起こるため、医療者に伝えてください。厚生労働省の情報サイト(eJIM)が米国NCCIHの情報としてそう勧めていて、多くの人は問題なくとれるものの胃腸の不調や頭痛が起こりうること、妊娠中・授乳中は安全でない可能性があることも載せています(出典: ejim.mhlw.go.jp)。HFNetには、抗血小板薬を飲んでいた人が多い量をとって、血液の固まり方の異常と血尿が出た海外の例などが載っています(出典: hfnet.nibn.go.jp)。
よくある質問
やめてもいい?
排尿の悩み(前立腺肥大症)を目的に飲んでいる場合は、続けることを支持するはっきりした結果はありません(格付けはD)。
ただし、医師に勧められて飲んでいる人、薬を飲んでいる人、検査で不足を指摘された人は、自分の判断でやめずに、医師か薬剤師に相談してください。続ける場合は、このページの「飲む前に知っておくこと」(公的機関の注意情報)を先に読んでください。
飲んで効いた気がするのはなぜ?
成分を含まないもの(プラセボ)を飲んだ人でも、体調が良くなったと感じることはよくあります。飲んでいるという安心感や期待で、感じ方が変わるためです。体調にはもともと波があるので、つらい時期に飲み始めると、自然に戻った分まで効いたように感じることもあります。えびらぼでは、こうした分を差し引けるように、成分を含まないものと比べた試験の結果を重視して格付けしています。
形や量が違えば効く?
格付けは、試験で使われた形と量での結果です。
- 排尿の悩み(前立腺肥大症):果実抽出物320mg/日(試験によっては最大960mg/日)を3か月〜1年半
これと違う形や量で効くかどうかは、その形や量で試した試験が無いと分かりません。吸収が良いことと、体に効果が出ることは別で、試験で確かめる必要があります。
効いたという論文もあるのでは?
1件の試験では、偶然や試験のやり方の偏りで、良い結果が出ることがあります。このページでは6件の論文を読み、そのうち3件は複数の試験をまとめた研究です。格付けは、試験どうしで結果が一致するかと、試験の質で決めています(格付けの決め方)。効いたという試験があっても、ほかの試験と合わせると、はっきりした差が出ないことがあります。
効果ごとの論文の中身
排尿の悩み(前立腺肥大症)に効く?
Dランク・効かないという根拠対象:前立腺肥大症による排尿症状(下部尿路症状)のある中高年男性
前立腺肥大症の男性が飲んでも、排尿の症状や生活の質は、ノコギリヤシの入っていないものとほとんど変わらないことが確かめられています。量を通常の3倍に増やした試験でも、はっきりした差は出ませんでした。
くわしく効果の大きさ・注意点・論文6本
効果の大きさ
35点満点の症状スコアの差は、3〜6か月の時点で平均0.9点でした。患者が「少し良くなった」と感じる差の目安(約2点)に届きません。1年以上たった時点(12〜17か月)の差は0.07点(95%信頼区間(結果のぶれの幅) −0.75〜0.88)で、ほとんど変わりませんでした。
- 試験の内容
- 果実抽出物320mg/日(試験によっては最大960mg/日)を3か月〜1年半
- 確実性(中心にした解析の著者による評価)
- 高い
- 根拠にした論文
- コクラン・レビュー 1本・ランダム化比較試験 2本・ネットワークメタ分析 1本・メタ分析 1本・診療ガイドライン 1本
根拠にした論文
- 1.
コクラン・レビュー・Franco(2023年)・Cochrane Database of Systematic Reviews・19研究
コクランレビュー(27件4656人、うちノコギリヤシ単独対プラセボは19件、2022年9月まで検索)。低バイアスの試験に限ると、35点満点の症状スコアの差は3〜6か月で-0.90点(9試験1681人)、12〜17か月で0.07点で、ほとんど差がない(確実性高)。生活の質も有意差なし(確実性高)。
Serenoa repens for the treatment of lower urinary tract symptoms due to benign prostatic enlargement. doi:10.1002/14651858.cd001423.pub4
- 2.
ランダム化比較試験・Barry(2011年)・JAMA・369人
米国NIHが資金を出した北米11施設の二重盲検RCT(CAMUS、男性369人)。ノコギリヤシ抽出物を72週かけて320mgから960mg/日まで増やしても、症状スコアはプラセボより改善せず(差0.79点でプラセボ側が良い)、副次評価項目もすべて有意差なし。
Effect of increasing doses of saw palmetto extract on lower urinary tract symptoms: a randomized trial. doi:10.1001/jama.2011.1364
- 3.
ランダム化比較試験・Bent(2006年)・New England Journal of Medicine・225人
中等度〜重度の前立腺肥大症状のある50歳以上の男性225人の二重盲検RCT。ノコギリヤシ160mgを1日2回、1年間摂っても、症状スコア(差0.04点、95%CI -0.93〜1.01)、尿の勢い、前立腺の大きさ、残尿、生活の質、PSAはプラセボと有意差がなかった。
Saw palmetto for benign prostatic hyperplasia. doi:10.1056/nejmoa053085
- 4.
ネットワークメタ分析・Russo(2021年)・European Urology Focus
ヘキサン抽出製剤・それ以外の製剤・プラセボ・α遮断薬を比べた22件のRCT(8564人、α遮断薬の試験を含む)のネットワークメタ分析。ノコギリヤシは症状スコア・尿の勢いのいずれも臨床的に意味のある改善を示さなかった。
Clinical Efficacy of Serenoa repens Versus Placebo Versus Alpha-blockers for the Treatment of Lower Urinary Tract Symptoms/Benign Prostatic Enlargement: A Systematic Review and Network Meta-analysis of Randomized Placebo-controlled Clinical Trials. doi:10.1016/j.euf.2020.01.002
- 5.
メタ分析・Vela‐Navarrete(2018年)・BJU International・27研究・5,800人
ヘキサン抽出の特定製剤の15件のRCTと12件の観察研究(5800人)の系統的レビュー・メタ分析。プラセボと比べ夜間の排尿が1晩0.64回減り、尿の勢いが2.75mL/秒増えた。症状スコアの改善はα遮断薬と同程度とした。観察研究を含み、特定製剤のみの解析。
Efficacy and safety of a hexanic extract of Serenoa repens (Permixon® ) for the treatment of lower urinary tract symptoms associated with benign prostatic hyperplasia (LUTS/BPH): systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and observational studies. doi:10.1111/bju.14362
- 6.
診療ガイドライン・Anract(2025年)・The French Journal of Urology
フランス泌尿器科学会の2025年の指針。ヘキサン抽出製剤のノコギリヤシは軽度〜中等度の下部尿路症状に対して検討してもよいとした。主な薬物治療はα遮断薬や5α還元酵素阻害薬など。
Non-interventional and medical management of lower urinary tract symptoms related to benign prostatic hyperplasia in men: Guidelines of the French LUTS Committee (CTMH). doi:10.1016/j.fjurol.2025.102952
このページについて
サプリの広告や販売リンクは載せていません。専門家の監修は受けていません。格付けは格付けの決め方に沿って、論文の結果から決めています。最終更新日は2026-10-04です。誤りに気づいたら誤りを知らせるから送ってください。
このページの言葉
- プラセボ
- 見た目は同じで、調べている成分を含まないもの。「飲んだ」という思い込みや、自然に良くなる分を差し引くために、比べる相手として使います。
- ランダム化比較試験(RCT)
- 参加者を、くじ引きのような偶然でグループに分けて、たとえば成分を飲むグループとプラセボを飲むグループの結果を比べる試験。分け方の偏りが結果に混ざりにくい方法です。
- メタ分析・統合
- 同じテーマの試験の結果を集めて、まとめて計算し直した研究。1つの試験より、偶然に左右されにくくなります。
- 系統的レビュー
- 決めた手順で、関係する研究をもれなく集めて評価した研究。メタ分析を含むことが多いです。
- コクラン・レビュー
- 国際的な非営利の団体コクランが、決まった手順で作る系統的レビュー。利害関係のある企業からの資金は受けない決まりで作られます。
- ネットワークメタ分析
- 3つ以上の方法を、直接比べていない組み合わせも含めて同時に比べるメタ分析。
- 確実性
- 結果がどのくらい確かかについて、解析した研究者が付けた評価(高・中・低・非常に低)。低いほど、今後の研究で結果が変わる可能性が高いことを表します。
- 有意差
- 偶然だけでは説明しにくい差があること。差が大きいという意味ではありません。
- 95%信頼区間(95%CI)
- 結果の数字のぶれの幅。本当の値がおそらく入っている範囲の目安です。差の範囲が 0(比の場合は 1)をまたぐときは、差がない可能性を否定できません。
- 臨床的に意味のある差
- 本人が「良くなった」と感じられる、最小の差の目安。統計で差があっても、この目安より小さければ実感は難しいとされます。
- eJIM
- 厚生労働省の「『統合医療』に係る情報発信等推進事業」のサイト。サプリなどについて、海外の公的機関の情報を翻訳して載せています。
運動の効果も同じ基準で格付けしています
運動は19項目中4項目がSでした
- サプリ119項目
- ABCD
- 3%
- 運動19項目
- SAB
- 21%
S(根拠が強い)は、サプリが119項目中4項目、運動が19項目中4項目でした。運動のSは筋力・筋量(筋トレ)、血圧、血糖値、転倒の予防です。サプリと運動では調べた効果や対象者が違うため、同じ目的で直接比べた結果ではありません。
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