亜鉛に効果はある?
亜鉛(グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛酵母)論文13本で格付け2026-10-04 更新
結論
風邪が早く治る結果はありますが、まだはっきりしません。
- 期間は約2.4日短く、子どもでははっきりしない
- 不妊治療を予定する男性で、精子の濃度や動きにはっきりした差は出なかった
- 亜鉛が足りている男性で、男性ホルモンが増えるかは分かっていない
効くと言われていること
論文では- 風邪が早く治る?対象:風邪をひいた人(主に成人。子どもでは差がはっきりしない)根拠は限定的
- 精子の質に効く?対象:不妊治療中・妊よう性の低い男性根拠は限定的
- 男性ホルモン(テストステロン)は増える?対象:成人男性(亜鉛が不足していない人が中心)根拠が乏しい
S〜D の決め方は格付けの決め方
飲む前に:公的機関の注意があります飲む前に知っておくこと
薬を飲んでいる人は、飲む前に医師・薬剤師に相談してください。厚生労働省の情報サイト(eJIM)によると、亜鉛はキノロン系・テトラサイクリン系の抗菌薬やペニシラミンの吸収を妨げ、チアジド系利尿薬を飲むと体から出ていく亜鉛が増えます(出典: ejim.mhlw.go.jp)。同じサイトには、とりすぎると吐き気・嘔吐・胃の不快感などが起こることや、1日50mg以上を数週間続けると銅が吸収されにくくなり、体の銅が足りなくなったり免疫の働きが落ちたりする可能性があることも載っています。米国の許容上限摂取量は、成人で40mg/日です。
よくある質問
やめてもいい?
風邪の期間、精子の質、男性ホルモン(テストステロン)を目的に飲んでいる場合は、続けることを支持するはっきりした結果はありません(格付けはB・B・C)。
ただし、医師に勧められて飲んでいる人、薬を飲んでいる人、検査で不足を指摘された人は、自分の判断でやめずに、医師か薬剤師に相談してください。続ける場合は、このページの「飲む前に知っておくこと」(公的機関の注意情報)を先に読んでください。
飲んで効いた気がするのはなぜ?
成分を含まないもの(プラセボ)を飲んだ人でも、体調が良くなったと感じることはよくあります。飲んでいるという安心感や期待で、感じ方が変わるためです。体調にはもともと波があるので、つらい時期に飲み始めると、自然に戻った分まで効いたように感じることもあります。えびらぼでは、こうした分を差し引けるように、成分を含まないものと比べた試験の結果を重視して格付けしています。
形や量が違えば効く?
格付けは、試験で使われた形と量での結果です。
- 風邪の期間:亜鉛トローチ(酢酸亜鉛・グルコン酸亜鉛)など。発症後すぐから1日75mg以上を2週間以内が多い
- 精子の質:亜鉛(葉酸と併用が多い)1日30〜66mg程度を3〜6か月
- 男性ホルモン(テストステロン):亜鉛サプリ(単独または葉酸・マグネシウムとの配合)
これと違う形や量で効くかどうかは、その形や量で試した試験が無いと分かりません。吸収が良いことと、体に効果が出ることは別で、試験で確かめる必要があります。
効いたという論文もあるのでは?
1件の試験では、偶然や試験のやり方の偏りで、良い結果が出ることがあります。このページでは13件の論文を読み、そのうち11件は複数の試験をまとめた研究です。格付けは、試験どうしで結果が一致するかと、試験の質で決めています(格付けの決め方)。効いたという試験があっても、ほかの試験と合わせると、はっきりした差が出ないことがあります。
効果ごとの論文の中身
風邪が早く治る?
Bランク・根拠は限定的対象:風邪をひいた人(主に成人。子どもでは差がはっきりしない)
風邪をひいてから亜鉛トローチなどを使うと、風邪の期間が平均約2.4日短くなるという結果はありますが、まだはっきりしません。子どもの試験では、はっきりした差は出ていません。
くわしく効果の大きさ・注意点・論文5本・ほかの成分と運動
効果の大きさ
プラセボ(成分の入っていないもの)と比べると、風邪をひいてから使った8試験(972人)で、風邪の期間が平均約2.4日短くなりました(確実性は低い)。
- 試験の内容
- 亜鉛トローチ(酢酸亜鉛・グルコン酸亜鉛)など。発症後すぐから1日75mg以上を2週間以内が多い
- 確実性(中心にした解析の著者による評価)
- 低い
- 根拠にした論文
- コクラン・レビュー 1本・メタ分析 4本
注意点
- 量と使い方:効果を報告した解析[4]は、1日75mg超の亜鉛トローチの試験をまとめたものです。それより少ない量では効果がなかったとするレビューもあります(厚労省eJIM(厚生労働省の「統合医療」情報サイト))。この量は米国の許容上限摂取量(成人40mg/日)を超えており、短期間の使用に限った研究です。
- 子ども:子どもの試験では、有意な短縮はありませんでした[2]。
- 副作用:治療では、味の悪さや吐き気などの軽い副作用が増えることが示されています[1]。
- 予防:予防目的で使うと、風邪をひく割合はほとんど変わらない可能性があります(確実性は低い)。亜鉛不足の可能性が低い成人の解析[3]では、口や鼻から使う亜鉛でプラセボより急性の気道感染症が少し減りました。風邪のウイルスを接種した試験では、舌下の亜鉛で風邪をひく割合に有意差(偶然では説明しにくい差)はありませんでした[3]。
根拠にした論文
- 1.
コクラン・レビュー・Nault(2024年)・Cochrane Database of Systematic Reviews・34研究・8,526人
34件のRCT(8526人)のコクランレビュー。治療目的では風邪の期間が平均2.37日短くなる可能性(8試験・972人、ばらつき大、確実性は低い)。予防目的では風邪をひく割合にほとんど差なし(確実性は低い)。治療目的で軽い副作用がおそらく増える(リスク比1.34、確実性は中)。
Zinc for prevention and treatment of the common cold. doi:10.1002/14651858.cd014914.pub2
- 2.
メタ分析・Science(2012年)・Canadian Medical Association Journal・17研究・2,121人
17件のRCT(2121人)のメタ分析。亜鉛で風邪の症状期間が平均1.65日短縮(ばらつき大)。成人では2.63日短縮したが、子どもでは有意差なし。副作用・味の悪さ・吐き気は亜鉛群で多かった。
Zinc for the treatment of the common cold: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. doi:10.1503/cmaj.111990
- 3.
メタ分析・Hunter(2021年)・BMJ Open・28研究・5,446人
成人を対象とした28件のRCT(5446人)の迅速系統的レビュー。舌下(トローチ)や鼻への亜鉛で、症状が平均2日早く治まった(確実性は非常に低い)。1日あたりの平均の症状の重さには有意差がなかった。軽い副作用は増えた(確実性は中)。
Zinc for the prevention or treatment of acute viral respiratory tract infections in adults: a rapid systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. doi:10.1136/bmjopen-2020-047474
- 4.
メタ分析・Hemilä(2017年)・JRSM Open・7研究・575人
1日75mgを超える亜鉛トローチの7試験(自然に風邪をひいた575人)のメタ分析。風邪の期間は33%短縮(95%CI 21〜45%)。酢酸亜鉛とグルコン酸亜鉛で有意差はなく、1日100mgを超えても効果は大きくならなかった。
Zinc lozenges and the common cold: a meta-analysis comparing zinc acetate and zinc gluconate, and the role of zinc dosage. doi:10.1177/2054270417694291
- 5.
メタ分析・Hemilä(2016年)・British Journal of Clinical Pharmacology・3研究・199人
酢酸亜鉛トローチの3件のRCT(風邪の患者199人)の個人データのメタ分析。平均約7日の風邪が2.73日短くなった。アレルギー・喫煙・重症度・年齢・性別などで効果は変わらなかった。
Zinc acetate lozenges for treating the common cold: an individual patient data meta-analysis. doi:10.1111/bcp.13057
精子の質に効く?
Bランク・根拠は限定的対象:不妊治療中・妊よう性の低い男性
不妊治療を予定する男性が亜鉛と葉酸を6か月飲んでも、精子の濃度や動きなどと出生率にはっきりした差は出ず、DNAが切れた精子の割合はわずかに増えました。小さな試験をまとめると精子の濃度などがやや良くなっていますが、まだはっきりしません。
くわしく効果の大きさ・注意点・論文5本
効果の大きさ
不妊治療を予定する男性2370人の試験[1]では、プラセボ(成分の入っていないもの)と比べて精子の濃度・運動率・形態にはっきりした差は出ず、出生率も34%対35%でほぼ同じでした。小規模な試験をまとめた解析での改善は、確実性が低い〜非常に低いとされています。
- 試験の内容
- 亜鉛(葉酸と併用が多い)1日30〜66mg程度を3〜6か月
- 確実性(中心にした解析の著者による評価)
- 低い
- 根拠にした論文
- ランダム化比較試験 2本・メタ分析 3本
注意点
根拠にした論文
- 1.
ランダム化比較試験・Schisterman(2020年)・JAMA・2,370人
不妊治療を予定する2370組の多施設RCT。男性が葉酸5mg+亜鉛30mgを6か月飲んでも、精子の濃度・運動率・形態などと出生率(34%対35%)はプラセボと有意差がなかった。精子のDNA断片化はわずかに増え、胃腸症状も多かった。
Effect of Folic Acid and Zinc Supplementation in Men on Semen Quality and Live Birth Among Couples Undergoing Infertility Treatment: A Randomized Clinical Trial. doi:10.1001/jama.2019.18714
- 2.
メタ分析・Michaelsen(2025年)・Nutrients・50研究
男性不妊に対するサプリの12週以上のプラセボ対照RCT50件の系統的レビュー・メタ分析。妊娠・出生への効果はどのサプリでもみられなかった。亜鉛+葉酸は精子濃度を改善したが、根拠の確実性は全体に低〜非常に低い。
The Effect of Dietary Supplements on Male Infertility in Terms of Pregnancy, Live Birth, and Sperm Parameters: A Systematic Review and Meta-Analysis. doi:10.3390/nu17101710
- 3.
メタ分析・Salas-Huetos(2018年)・Advances in Nutrition・15研究
栄養素・サプリと精子の質のRCTのメタ分析(定量解析15報)。亜鉛で精子濃度(1mLあたり148万個)と総運動率(7.03%)が増加。ただし研究の規模が小さく、ばらつきが大きいため慎重な解釈が必要と著者は述べている。
The Effect of Nutrients and Dietary Supplements on Sperm Quality Parameters: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. doi:10.1093/advances/nmy057
- 4.
メタ分析・Zhao(2016年)・Scientific Reports・20研究
20研究のメタ分析。不妊の男性は精漿中の亜鉛が低く、亜鉛の補給で精液量・運動率・正常形態率が増えたと報告。ただし観察研究による比較と補給研究をあわせた解析である。
Zinc levels in seminal plasma and their correlation with male infertility: A systematic review and meta-analysis. doi:10.1038/srep22386
- 5.
ランダム化比較試験・Ebisch(2006年)・International Journal of Andrology・87人
妊よう性のある男性47人と低い男性40人の二重盲検RCT。葉酸5mg+硫酸亜鉛66mgを26週間で、妊よう性の低い男性の精子濃度が増加。その他の精液所見とテストステロンなどのホルモンは変化なし。
Does folic acid and zinc sulphate intervention affect endocrine parameters and sperm characteristics in men? doi:10.1111/j.1365-2605.2005.00598.x
男性ホルモン(テストステロン)は増える?
Cランク・根拠が乏しい対象:成人男性(亜鉛が不足していない人が中心)
亜鉛が足りている男性が飲んで男性ホルモンのテストステロンが増えるかどうかは、信頼できる試験がほとんどなく分かっていません。亜鉛が不足すると下がることは知られていますが、亜鉛と葉酸を飲んだ男性の試験では変化はみられませんでした。
くわしく効果の大きさ・注意点・論文4本
- 試験の内容
- 亜鉛サプリ(単独または葉酸・マグネシウムとの配合)
- 根拠にした論文
- 系統的レビュー 2本・ランダム化比較試験 1本・コクラン・レビュー 1本
注意点
- 亜鉛が欠乏している人:亜鉛欠乏ではテストステロンが下がり、補給で回復したとする小規模で対照群のない研究があります(Prasad 1996、9人)。欠乏しているときの結果を、足りている人に当てはめることはできません。
- 透析患者:透析患者では、経口亜鉛で上昇した小さな試験があります[3]。
- 配合サプリ:高用量の亜鉛・マグネシウム配合サプリを、運動習慣があり亜鉛が足りている男性14人に与えた研究があります(Koehler 2009)。テストステロンは変わりませんでしたが、対照群があったかどうかは抄録からは分かりません。
根拠にした論文
- 1.
系統的レビュー・Morgado(2024年)・International Journal of Impotence Research・52研究
テストステロンを上げるとされる27成分・52研究の系統的レビュー(亜鉛・マグネシウムは5研究)。大半はテストステロンを上げられず、亜鉛・マグネシウムは「有効」「おそらく有効」とされた成分に含まれなかった。
Do "testosterone boosters" really increase serum total testosterone? A systematic review. doi:10.1038/s41443-023-00763-9
- 2.
ランダム化比較試験・Ebisch(2006年)・International Journal of Andrology・87人
男性87人の二重盲検RCT。葉酸5mg+硫酸亜鉛66mgを26週間飲んでも、テストステロン・FSH・インヒビンBに変化はなかった。
Does folic acid and zinc sulphate intervention affect endocrine parameters and sperm characteristics in men? doi:10.1111/j.1365-2605.2005.00598.x
- 3.
コクラン・レビュー・Vecchio(2010年)・Cochrane Database of Systematic Reviews・15研究・352人
慢性腎臓病の性機能障害の治療に関するコクランレビュー(15研究・352人)。透析液への亜鉛添加ではテストステロンは上がらず、経口亜鉛では1試験(20人)で上昇した。
Interventions for treating sexual dysfunction in patients with chronic kidney disease. doi:10.1002/14651858.cd007747.pub2
- 4.
系統的レビュー・Te(2023年)・Journal of Trace Elements in Medicine and Biology・38研究
38報(臨床研究8・動物研究30)の系統的レビュー。亜鉛不足でテストステロンが下がり補給で改善すると結論したが、元の亜鉛・テストステロン値や用量などで効果は変わるとしている。根拠の多くは動物研究。
Correlation between serum zinc and testosterone: A systematic review. doi:10.1016/j.jtemb.2022.127124
このページについて
サプリの広告や販売リンクは載せていません。専門家の監修は受けていません。格付けは格付けの決め方に沿って、論文の結果から決めています。最終更新日は2026-10-04です。誤りに気づいたら誤りを知らせるから送ってください。
このページの言葉
- プラセボ
- 見た目は同じで、調べている成分を含まないもの。「飲んだ」という思い込みや、自然に良くなる分を差し引くために、比べる相手として使います。
- ランダム化比較試験(RCT)
- 参加者を、くじ引きのような偶然でグループに分けて、たとえば成分を飲むグループとプラセボを飲むグループの結果を比べる試験。分け方の偏りが結果に混ざりにくい方法です。
- メタ分析・統合
- 同じテーマの試験の結果を集めて、まとめて計算し直した研究。1つの試験より、偶然に左右されにくくなります。
- 系統的レビュー
- 決めた手順で、関係する研究をもれなく集めて評価した研究。メタ分析を含むことが多いです。
- コクラン・レビュー
- 国際的な非営利の団体コクランが、決まった手順で作る系統的レビュー。利害関係のある企業からの資金は受けない決まりで作られます。
- 確実性
- 結果がどのくらい確かかについて、解析した研究者が付けた評価(高・中・低・非常に低)。低いほど、今後の研究で結果が変わる可能性が高いことを表します。
- 有意差
- 偶然だけでは説明しにくい差があること。差が大きいという意味ではありません。
- 95%信頼区間(95%CI)
- 結果の数字のぶれの幅。本当の値がおそらく入っている範囲の目安です。差の範囲が 0(比の場合は 1)をまたぐときは、差がない可能性を否定できません。
- リスク比(相対リスク)・率比
- 起きた人の割合を2つのグループで比べた比。率比は、観察した人数と期間をそろえた起きる頻度(たとえば100人が1年あたりに起こす回数)の比。どちらも 1 なら差がなく、0.8 なら2割少ないことを表します。
- GRADE
- 結果がどのくらい確かかを、研究の質やばらつきから「高・中・低・非常に低」で評価する国際的な方法。
- eJIM
- 厚生労働省の「『統合医療』に係る情報発信等推進事業」のサイト。サプリなどについて、海外の公的機関の情報を翻訳して載せています。
運動の効果も同じ基準で格付けしています
運動は19項目中4項目がSでした
- サプリ119項目
- ABCD
- 3%
- 運動19項目
- SAB
- 21%
S(根拠が強い)は、サプリが119項目中4項目、運動が19項目中4項目でした。運動のSは筋力・筋量(筋トレ)、血圧、血糖値、転倒の予防です。サプリと運動では調べた効果や対象者が違うため、同じ目的で直接比べた結果ではありません。
運動のTier表を見る